松井冬子展(横浜美術館)
ART/ミュージアム - 2012年01月29日 (日)
このたびブログタイトルを「さくらのアジト」に変えました。ひき続きよろしくお願いいたします。
先日、横浜美術館で開催されている「松井冬子展」に行ってきました。

「世界中の子と友達になれる」というサブタイトルがついていますが、けっして、子供たちのフレンドリーな絵が並んでいるわけではありません。
もし、松井冬子の世界を知らずに、みなとみらい散歩のつもりで、この展覧会にお入りになったら、度肝を抜かれるほど、驚かれると思います。

「世界中の子と友達になれる」平成14年
この、展覧会のサブタイトルにもなっている絵は、松井冬子の絵画の中でも、最もおとなしい物です。
しかし、絵に近付いて、細かく観察すると、なにか良くないことを暗示させる感覚が伝わってきます。

たくさんの藤の花が垂れ下がるなかで、背を丸めた少女がなにかをささやいています。うしろには、空っぽの揺りかご。藤の花の先が黒っぽくなっていますが、よく見るとそれは、房ではなくて、たくさんのスズメバチです。
さらに少女の指先は、血のようなもので赤くなっています…

「この疾患を治癒させるために破壊する」平成16年
松井さんの絵には、このような難解なタイトルがつけられているものが多くあります。
靖国神社の近くにある、千鳥ヶ淵の桜ですが、水面に映る桜の中心に、渦を巻きながら引き込まれてゆく感覚を覚えます。この絵は横幅4mほどもある長尺の作品で、屏風のような4枚のパーツで構成されています。

「浄相の持続」平成16年
女性が自ら内臓を見せていますが、うっすらと微笑んでいます。よく見ると、子宮の中には子供を宿しています。
解説によると、まわりに咲いている花も、すべて、めしべを出しているそうです。

「浄相の持続のための下図」部分
この展覧会では、本画とともに、このような下図やスケッチ、構想のメモなども展示されていて、松井さんが、綿密な作業で絵を仕上げてゆくことがわかります。

「転換を繋ぎ合わせる」平成23年
九相図【くそうず】という仏典にもとずく絵画があります。人間が死んで腐敗し、骨になってゆくさまを、9つの段階に分けて描いてあるものです。
松井さんはこの九相図の連作に着手し、今回は5点が展示されました。さきほどの「浄相の持続」が1枚目、この「転換を繋ぎ合わせる」が4枚目です。
2枚目、3枚目、5枚目の絵は、載せられませんでしたが、興味のある方は実際にご覧になることをお勧めします。

「終極にある異体の散在」平成19年
皮膚が引き裂かれ、鳥や犬に襲われるという、一見苦痛に満ちた状況なのに、女性はどこか恍惚とした表情で走っています。

「完全な幸福をもたらす普遍的万能薬」部分 平成18年
ドレスで着飾った女性が微笑んでいますが、頭皮がめくれて、脳の血管が髪飾りのようになっています。

「なめらかな感情を日常的に投与する」部分 平成19年
松井さんの絵画のモチーフは、女性や人体の内臓や脳、それに動物や幽霊など、多岐にわたります。

「夜盲症のための下図」平成16年
これは「夜盲症」という本画の下図ですが、トレッシングペーパーに描いた下図を重ねて、幽霊の顔の表情を直しているのがわかります。

松井冬子さん、1974年生まれの38才。東京芸術大学で、日本画を専攻し、博士号を取得している才媛です。

この写真を見て、まさかこの人が、死体や内臓、幽霊などを、微細に描いている作家とは、誰も思わないだろうと思います。

自分が、松井冬子さんの絵と出逢ったのは、平成18年に、深川の現代美術館で行われた「MOTアニュアル2006」という、現代アートのグループ展でしたが、松井さんの絵だけが強烈な印象で、ほかの作家の方の絵は、ぜんぜん記憶に残らなかったほどです。

画壇だけにとどまらず、ファッション誌や女性誌などでモデルとして活躍されていますので、ご記憶のある方もあるでしょう。
横浜美術館で、2012年3月18日まで、開催されています。
みなとみらいのデートのついで…という向きには、おすすめしません。
常設展の「横浜コレクション」も名品揃いですよ(松井冬子展の入場券があれば見れます)
先日、横浜美術館で開催されている「松井冬子展」に行ってきました。

「世界中の子と友達になれる」というサブタイトルがついていますが、けっして、子供たちのフレンドリーな絵が並んでいるわけではありません。
もし、松井冬子の世界を知らずに、みなとみらい散歩のつもりで、この展覧会にお入りになったら、度肝を抜かれるほど、驚かれると思います。

「世界中の子と友達になれる」平成14年
この、展覧会のサブタイトルにもなっている絵は、松井冬子の絵画の中でも、最もおとなしい物です。
しかし、絵に近付いて、細かく観察すると、なにか良くないことを暗示させる感覚が伝わってきます。

たくさんの藤の花が垂れ下がるなかで、背を丸めた少女がなにかをささやいています。うしろには、空っぽの揺りかご。藤の花の先が黒っぽくなっていますが、よく見るとそれは、房ではなくて、たくさんのスズメバチです。
さらに少女の指先は、血のようなもので赤くなっています…

「この疾患を治癒させるために破壊する」平成16年
松井さんの絵には、このような難解なタイトルがつけられているものが多くあります。
靖国神社の近くにある、千鳥ヶ淵の桜ですが、水面に映る桜の中心に、渦を巻きながら引き込まれてゆく感覚を覚えます。この絵は横幅4mほどもある長尺の作品で、屏風のような4枚のパーツで構成されています。

「浄相の持続」平成16年
女性が自ら内臓を見せていますが、うっすらと微笑んでいます。よく見ると、子宮の中には子供を宿しています。
解説によると、まわりに咲いている花も、すべて、めしべを出しているそうです。

「浄相の持続のための下図」部分
この展覧会では、本画とともに、このような下図やスケッチ、構想のメモなども展示されていて、松井さんが、綿密な作業で絵を仕上げてゆくことがわかります。

「転換を繋ぎ合わせる」平成23年
九相図【くそうず】という仏典にもとずく絵画があります。人間が死んで腐敗し、骨になってゆくさまを、9つの段階に分けて描いてあるものです。
松井さんはこの九相図の連作に着手し、今回は5点が展示されました。さきほどの「浄相の持続」が1枚目、この「転換を繋ぎ合わせる」が4枚目です。
2枚目、3枚目、5枚目の絵は、載せられませんでしたが、興味のある方は実際にご覧になることをお勧めします。

「終極にある異体の散在」平成19年
皮膚が引き裂かれ、鳥や犬に襲われるという、一見苦痛に満ちた状況なのに、女性はどこか恍惚とした表情で走っています。

「完全な幸福をもたらす普遍的万能薬」部分 平成18年
ドレスで着飾った女性が微笑んでいますが、頭皮がめくれて、脳の血管が髪飾りのようになっています。

「なめらかな感情を日常的に投与する」部分 平成19年
松井さんの絵画のモチーフは、女性や人体の内臓や脳、それに動物や幽霊など、多岐にわたります。

「夜盲症のための下図」平成16年
これは「夜盲症」という本画の下図ですが、トレッシングペーパーに描いた下図を重ねて、幽霊の顔の表情を直しているのがわかります。

松井冬子さん、1974年生まれの38才。東京芸術大学で、日本画を専攻し、博士号を取得している才媛です。

この写真を見て、まさかこの人が、死体や内臓、幽霊などを、微細に描いている作家とは、誰も思わないだろうと思います。

自分が、松井冬子さんの絵と出逢ったのは、平成18年に、深川の現代美術館で行われた「MOTアニュアル2006」という、現代アートのグループ展でしたが、松井さんの絵だけが強烈な印象で、ほかの作家の方の絵は、ぜんぜん記憶に残らなかったほどです。

画壇だけにとどまらず、ファッション誌や女性誌などでモデルとして活躍されていますので、ご記憶のある方もあるでしょう。
横浜美術館で、2012年3月18日まで、開催されています。
みなとみらいのデートのついで…という向きには、おすすめしません。
常設展の「横浜コレクション」も名品揃いですよ(松井冬子展の入場券があれば見れます)
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